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駅時刻表撤去が呼んだ波紋――「スマホ至上主義」批判を検証する


令和7年(2025) 11月、某市営地下鉄のホームに設置されていた紙の時刻表が撤去されたことが、𝕏で批判的な「話題」となり、大きな波紋を呼んだ。

予備

この措置は、デジタル化を推し進める「スマホ至上主義」に対する懸念として受け止められ、「何をケチりたくてこんなことをするのか」「アナログな情報を軽視することでインフラが脆弱になる」といった批判が寄せられた。アナログを軽視する風潮への危機感は理解できるが、今回の施策が本当に「崩壊しやすいインフラ」への転換を意味するのか、冷静に検証する必要がある。

この問題がネットメディアにも取り上げられ、「スマホを持っていない老人が困る」という批判が特に目立った。しかし、令和7年(2025) 11月の時点で、当該地下鉄路線を運営する某市は「方針を変更する予定はない」と言い切っていた。何かと批判の的となりやすい某市営交通局のことであるため、非難囂々となることは承知の上で執行に踏み切ったと推察される。

J-CASTニュース 横浜市営地下鉄、ホーム上の時刻表を撤去→QRコードに SNSで批判続出も...市への苦情は「2週間で2件」

某市営地下鉄は、50年以上前の路線選定から駅名案、平成27年(2015) に運行開始した快速の停車駅に至るまで、常に批判され続けてきた経緯がある。交通局全体に話を広げると、最近ではバス運転手の高すぎる給与が批判されて減給した結果、運転手が大量退職し、減便で利用者が困るという試練を経験している。利用者が困ろうが、批判している人々にとっては関係のない話であり、なんなら利用者ではない可能性すらある。

関係無いが、某市における都市高速道路新路線敷設に関しては、経路選定時から住民を巻き込み、余分な係争を避けスムーズな開業に至った。

ところで、スマホは老人には普及していないの?

ここで、「スマホは高齢者に普及していないのか?」という問いを立てる。 批判の目立つ意見を拾うと、「スマホを持っていない老人が困る」説が目につく。確かに、スマホを持たない人は不便を感じるかもしれないが、それは高齢者に限らず、若者や小児を含め条件は同じである。にもかかわらず、ことさら「スマホを持っていない老人」を強調することで、その代弁者になったつもりになっているように見受けられる。

また、高齢者はスマホを使わないという認識は、現在の普及状況から見ると、実態を無視した先入観でしかない。モバイル社会研究所による都市規模別スマホ所有率 の調査結果などからも、「スマホを持たない高齢者」は既に少数派であることがわかる。

都市規模別スマホ所有率 モバ研
これに対し、「少数派を切り捨てるな」という反論が予想される。しかし、困らない範囲で不要なものを撤去することは、経費と効果を総合的に判断した結果であれば、合理的な選択といえるのではないか。サービス維持に敏感なはずの某市交通局が、必要性を総合的に判断した結果だと考えるべきだ。

なお、個人的な身の回りを見ても、80代以上のスマホ所持率は半数以上である。さらに、例のワクチン接種予約がLINEからの申し込みも可能となった際、高齢者のスマホ利用率を押し上げたように感じている。電話予約は半日以上通話中でつながらない状況が続いたが、後からLINEで予約した人の方が比較的スムーズに接種できたという事実がある。その時、「スマホを持っていない高齢者が困る」という論調はあった?

つまり、叩きやすい某市営地下鉄だから叩かれているだけだということだ。

列車案内表示で事足りる都市型地下鉄の事情

駅ホームにおいて、時刻表設置はそれほど重要なことなのだろうか。

令和7年(2025) 11月現在、某市営地下鉄は日中10分間隔のパターンダイヤになっており、運行間隔はわかりにくいことはない。たしかに快速停車駅は単純な10分間隔ではないが、およそ10分間隔の各駅停車の間に30分間隔の快速が挟まる程度である。この状況で、1日を網羅した時刻表掲示がどうしても必要かというと、そうでもない。

例えば、JR山手線の駅時刻表は「おおむね3~10分おきに運転しております」とだけ記載されており、具体的な時刻表示はない。これは、密な運転間隔のため不便を感じないからであり、昭和からそのような書き方で済んでいる。そして無くて困るという話はまず聞かない。だって、みんな時刻表なんて見てないからね?

そして、時刻表が不要とされる理由は、密な運転間隔だけではない。駅ホームや入口近くには、次の列車、次の次の列車の情報が逐次表示されているからだ。これは、「今から乗る人には直近の情報を、全体のダイヤを総覧したい人にはインターネットやポケット時刻表で見てね」という棲み分けであり、この判断は間違っていない。「スマホを持っていない老人」が困るという状況には当てはまらない。

次と次の次の列車情報は常に表示されている

なお、ここで申しているのは政令指定都市の地下鉄であり、例えば3時間に2本程度の運行しかないローカル線とは事情が異なる点は強調しておく。

本当に駅から時刻表が完全撤去されたのか?

発端となったSNS投稿は、その主題である「反スマホ至上主義」を強調するため、時刻表が「完全撤去」されたかのようなミスリードを誘う表現を用いていた。駅によって多少の違いはあるものの、前述の通り、入口近くやホームには次や次の次の列車情報が逐次表示されている。これで十分ではないか。一日中のすべてのダイヤを24時間ずっと掲示し続けなくてはならないことと、スマホ至上主義の問題は、個別に語られるべきであり、同列に論じても解決には近付かない。

だから、現状を確認するため、実際に駅を見に行った。

某市営地下鉄の時刻表事情① 上永谷駅

上永谷駅は神奈川県横浜市港南区に位置する駅で、島式ホームの2面4線。すぐ南には上永谷車両基地があり、始発・終着列車も設定され、快速列車の停車駅にもなっている。港南区役所の最寄り駅であり、区の行政・生活の中心地の一つである。また、駅周辺にはマンションや住宅地が広がるほか、大型商業施設も立地している。

さて、駅の様子を見てみると、

ホームの時刻表はQRコード®の表示だけになっていた。11月からダイヤ改定になったようで、ポケット時刻表の配布案内がいかにも仮だという感じで掲示されていた。なお、券売機と改札口の間の柱に時刻表が掲示されていた。

また、改札口付近に1か所と、2つあるプラットフォーム各2か所に、次と次の次の発車案内の表示がある。利便性についてはスマホを携帯しようがしまいがとくに違いが無いように感じた。

某市営地下鉄の時刻表事情② 上大岡駅

上大岡駅は神奈川県横浜市港南区位置する駅で、島式ホーム1面2線。ハマの赤いあんチクショウ京浜急行電鉄と一体化したターミナル駅で、30路線くらいのバス乗り場がある。駅周辺は、デパートや商業施設が集中していて利便性が高い。

念のため駅の様子を見てみると、

ホームの時刻表はQRコード®の表示だけになっていた。

11月からダイヤ改定になったようで、ポケット時刻表の配布案内がいかにも仮だという感じで掲示されていた。なお、券売機から出口の方に行った、照明がやや不足している壁に時刻表が掲示されていた。

また、改札口付近に1か所と、プラットフォーム2か所に、次と次の次の発車案内の表示がある。利便性についてはスマホを携帯しようがしまいがとくに違いが無いように感じた。

某市営地下鉄の時刻表事情③ 戸塚駅

神奈川県横浜市戸塚区にする駅で、島式ホーム1面2線。JR東日本東海道本線・横須賀線との乗換駅であり、横浜市南西部における主要なターミナル駅である。駅周辺は大規模な再開発が行われ、平成25年(2013) に区役所が駅前に移転したほか、商業施設や地下連絡通路が整備されており、利便性が高い。

念のため駅の様子を見てみると、

ホームの時刻表はQRコード®の表示だけになっていた。

改札口近くの券売機脇に時刻表が掲示されていた。

また、改札口付近に2か所と、プラットフォーム各2か所に、次と次の次の発車案内の表示がある。利便性についてはスマホを携帯しようがしまいがとくに違いが無いように感じた。

駅利用者は、今乗るべき列車がどうなのかという直近のを知りたいだけ

ダイヤ改正直後は確認したいこともあろうが、それはネットで調べるか、駅事務所でポケット時刻表をもらえばよい。やがて記憶し、慣れる。それ以外の日常では、列車がすぐに来るか、遅れなどのトラブルが発生していないか、快速列車は先行車をどこで追い越すかなどがわかれば十分であり、それらは発車案内で逐次表示され続けているため、紙の時刻表の有無は特に関係ない。

発車案内は改札口付近とホームにそれぞれ設置されており、見落としても10分に1本程度は運行されるため、大きな不便は生じない。プラットフォームに行ってから時計を見て時刻表とにらめっこする人は稀である。バスであればまだあり得なくもないが、発車案内がある地下鉄駅には、どうしても時刻表掲示が必要という場面はほぼないと交通局が判断するのは適当だ。

このような意味において、必要最低限の時刻表を残してプラットフォーム上の時刻表を廃止することを「スマホ至上主義」と簡単に断じるのは無理がある。そう思えて仕方ない。140字しかないからとかそういうことではない。

「QRコード」は㈱デンソーウェーブの登録商標です
特許庁


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